深く息を吸って最初の音。

なんだかんだ言って、この部分を吹くことは楽しい。

もちろん、とてつもなく恥ずかしいけど。

実里が、吹君が、

好きって言ってくれた私の音を存分に響かせる。

少しだけ視線を譜面からずらして吹君のほうを見ると、焦りのブルーグレーが目に映る。

もう少しだから、あとすこしだから。

ソロを吹き終えて、ピッコロに持ち変える直前。

吹君の譜面を指さして、

『つ、ぎ、は、こ、こ。』

口だけを動かして吹君に伝える。

ブルーグレーの霧が晴れる。

吹君のフルートが聞こえる。

集中と必死の青とレモンイエロー。

大丈夫、このままの色で。