「……すげぇ、油絵だ……」

美術室に入ってすぐに目に入ったのは、イーゼルに立てかけられた油絵。

フリージアさんは、すぐに油絵に駆け寄ると眺め始める。美術室を見渡してみれば、油絵の他にもデッサンだったり風景画が飾られていた。

その時ドアが開いた音がして、僕らは音がした方を見る。

そこには、黒髪に黄色い目の男性が立ってた。陽彩さんは、男性と目を合わせると「鈴斗、いらっしゃい」と微笑む。

「……あんたが勝手に呼んだんでしょ?あれから召喚されるまでの10分間で、必死に歴史を勉強したんだけど……」

「ありがとう」

「全く……教えるのは、少しだけだよ?その後、魔法学の授業があるし、簡単にしか勉強してないから」

「十分だよ。鈴斗、自己紹介を」

「えっと、初めまして。俺は、本居 鈴斗(もとおり すずと)。町の中心部に建つ魔法学校の教師として働いています」

「魔法使い……僕と同じか……でも、魔法学校はないなぁ……僕の世界には」

「……じゃあ、俺がいる世界とは別の世界にいるんだね……冬都、だっけ?」

「そうです。というか、僕の名前を知ってるんですね……」

そう言うと、先生は「陽彩から、君たちのことは事前に聞いているからね」と答えた。