俺の家は確かにマンションだが……。家までの道のりを歩きながら、俺はまるで何か魔法でもかけられているかのように、何度も鳴り出す携帯に出ていた……。
「私メリーさん。今、あなたの家の7階にいるの」
 やがて、メリーさんの位置は俺の家のある8階のすぐ下の階になった。
 家までは、もう500メートルくらいでたどり着く。俺は次第に怖くなってしまい、メリーさんの次の電話にでるかどうか、非常に困っていた。次はウチの階だ、ウチは最上階だから、この上はもう屋上しかなくなってしまう。
 やがて……。
 携帯が鳴った。
 俺は立ち止まって、助けを求めるかのように周りを見るが、薄暗い夜道は人通りがないどころか、車の通りすらも見られない。仕方なく、俺は通話ボタンを押した。
「私メリーさん。今、あなたの家の8階にいるの」
 心臓の鼓動は早鐘を打ち鳴らし、膝はガクガクと震えてしまって座り込みそうだった。とうとう俺の家の階まで来てしまった。このまま帰るのが怖いのと同時に、家の中に誰か残っていないか不安になった。メリーさんの話は『お前の後ろだ!』で終わっているため、その後が分からないからだ。
 しかし、それからマンションの敷地の入り口までの間に、メリーさんからの電話は来なかった。まるで始めからメリーさんの電話はなかったかのように、携帯は沈黙を決め込んだ。
 ……なんだ? どうしたんだいったい?
俺は不安になり、充電の残り少なくなった携帯で家に電話をしてみた。
 プルルルルル。プルルルルル。 ガチャ。
「はい、石田です」
 淳の声だった。少しばかりの安堵感が胸に広がったが、慌てて直ぐに尋ねた。
「お、淳か。お母さん達は? お前一人か?」
「俺しかいないよ。まだ誰も帰ってきてないよ。徹は? 今何処にいるの?」
「もう家の近くだ。なあ、それより何か変わったことはなかったか?」
「変わったことって?」
「いや、誰かが訪ねて来たりとかさ……」
「別に誰も、何で?」
「いや、何でもない。ならいいんだ。俺はもう直ぐ家につくからな。そしたらゲームでもして遊ぼうぜ」
「わかった、待ってるよ」
 ガチャリ。