第14話 『鏡うつし』 語り手 石田淳

話もいよいよ3週目だ。いったいいつまで続けてもらえるのだろうか? いつまでも聞きたいような、もうやめてもらいたいような複雑な気分だ。
「よし、じゃあ僕の3話目を話すね。キミは必ずといっていいほど毎日会う人を知っているかな?」
「毎日会う人? 学校とかでですか?」
「いや、仮に一日中家にいたとしても、ほぼ間違いなく会う……というか、目を合わせてしまう人」
 まるで何かのクイズのように尋ねてくる淳さんは、少し面白そうに笑った。
「なんだろう……? 家にいても……? 目を合わせてしまう?」
「ふふふ、答えはね自分だよ」
 淳さんの答えに納得し、続きを聞いた。
「この世の中には鏡が数多く存在する。学校でも家でも1度もトイレに入らないで過ごす人はいないよね。トイレに鏡がなくても、手を洗ったり、歯磨きする時に洗面台にあるよね。まあ、台所で歯を磨く人もいるかもしれないけど、車のミラー、手鏡、エレベーター備え付けの鏡や、きれいに磨かれているビルの窓とかにも自分の姿は映る。……まあ、目隠しして過ごすなら話は別だけど」
 淳さんは不気味な笑いをしたまま、話を続ける。
「誰とも目を合わせないように生活しても必ずといっていいほど見てしまう目……自分の目。この世に自分を映すものがある限り、必ず誰かに見られて生活してるのと一緒。これはそんな鏡に映る自分に極度に怯えた子の話」