……そして、夏休みも終わろうという夜のことだった。
「加奈子、電話よ。久美ちゃんのお母さんから」
「え? お母さん? なんだろう一体」
私は久美ちゃんに何かあったのではないかと思い、慌てて受話器を受け取った。
「もしもし、加奈子です」
「ああ加奈子さん、あの、うちの子が私の財布を持って急に飛び出して行ってしまって。そちらに行ってないかしら? 何か凄い剣幕で出て行ってしまったのよ。ジュースが飲みたいって」
「ジュースですか! そんなに毎日飲んでたんですか?」
「もう最近は水代わりに飲んでるような感じだったわ。それにご飯もほとんど食べずにひたすらジュースばかり……」
アタシは最後まで聞かずに玄関を飛び出した。母親が何か言っていたのが聞こえたが、止まることなく自動販売機へ急いだ。絶対に彼女はそこにいるはずだ。
「はあはあはあ」
学園までの10分間を私は全力疾走で駆け抜けた。遠くから自動販売機の明かりが見え、そこに誰かが寄りかかっているのが分かった。
「久美ちゃん!」
アタシは彼女の近くまでたどり着いて目の前の光景に愕然とした。
「おねが~い、売って~、売ってよ~! お金はいくらでも出すから~!」
……そこには、様々なジュースの缶が未開封のままゴロゴロと転がっており、それに混じって例のジュースの空き缶が落ちていた。その数は軽く20を越えているだろうか。
「久美ちゃん……」
アタシはコンクリートにペシャンと座り込んでしまい、呆然と変わり果てた彼女を眺めていた。
売り切れと赤いランプの表示が出ているにもかかわらず、一万円札を何枚も振りかざし、自動販売機を叩きながら泣きながら懇願する彼女を。
彼女の腹はまるで妊婦のように前に大きくせり出してしまい、顔は対照的に痩せこけていて、目をむき出しにして自動販売機をバンバン叩いていた。その別人のような姿になってしまった彼女を見て、アタシはその場から一歩も動くことができなかった……。
「加奈子、電話よ。久美ちゃんのお母さんから」
「え? お母さん? なんだろう一体」
私は久美ちゃんに何かあったのではないかと思い、慌てて受話器を受け取った。
「もしもし、加奈子です」
「ああ加奈子さん、あの、うちの子が私の財布を持って急に飛び出して行ってしまって。そちらに行ってないかしら? 何か凄い剣幕で出て行ってしまったのよ。ジュースが飲みたいって」
「ジュースですか! そんなに毎日飲んでたんですか?」
「もう最近は水代わりに飲んでるような感じだったわ。それにご飯もほとんど食べずにひたすらジュースばかり……」
アタシは最後まで聞かずに玄関を飛び出した。母親が何か言っていたのが聞こえたが、止まることなく自動販売機へ急いだ。絶対に彼女はそこにいるはずだ。
「はあはあはあ」
学園までの10分間を私は全力疾走で駆け抜けた。遠くから自動販売機の明かりが見え、そこに誰かが寄りかかっているのが分かった。
「久美ちゃん!」
アタシは彼女の近くまでたどり着いて目の前の光景に愕然とした。
「おねが~い、売って~、売ってよ~! お金はいくらでも出すから~!」
……そこには、様々なジュースの缶が未開封のままゴロゴロと転がっており、それに混じって例のジュースの空き缶が落ちていた。その数は軽く20を越えているだろうか。
「久美ちゃん……」
アタシはコンクリートにペシャンと座り込んでしまい、呆然と変わり果てた彼女を眺めていた。
売り切れと赤いランプの表示が出ているにもかかわらず、一万円札を何枚も振りかざし、自動販売機を叩きながら泣きながら懇願する彼女を。
彼女の腹はまるで妊婦のように前に大きくせり出してしまい、顔は対照的に痩せこけていて、目をむき出しにして自動販売機をバンバン叩いていた。その別人のような姿になってしまった彼女を見て、アタシはその場から一歩も動くことができなかった……。

