学園怪談

「で、で、出た~!」
 3人は慌てて下がったために、お互いの靴を踏んだりして転んだ。
「な、何すんだよ!」
「ひい、ひいい! お、お助け~!」
 我先に逃げようとする米田君の足に、情けない声を出しながら鈴木君がしがみつく。完全に腰が抜けてしまったようで立ち上がることも出来ない。
「おい斎条、そっち持て!」
 米田君は父に言い、二人で鈴木君を引きずるようにして逃げ出した。
 幽霊は本当にゆっくりした足取りで普通に歩く半分以下のスピードで追いかけてくる。
 ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ。
 3人はあっという間に職員室までたどり着き、幽霊が追ってきていないのを確認すると、尻餅を着いた。
「はあはあはあ。で、出やがったよマジで」
「だ、だ、だ、だから僕は嫌だったんだこんな事。早く逃げようよ!」
「なあ、さっきの本当に幽霊だったのかな?」
 父が尋ねました。
「だって、動きとか本当に鈍かったし、あれって先輩たちのいたずらだったりしないかな」
「あああ、ああれは本物だ。死んでた女の子、かかか、彼女の事は知ってる」
「何? 本当か」
「ほほ、ホント。あれは2年のいじめられっ子だ。た、たぶんイジメでトイレにでも閉じ込められてたんだ、それで夜になって……」
 ようやく落ち着きを取り戻し始めたのか、鈴木君の言葉が聞き取りやすくなる。
「でもよ、それも俺らを騙すための芝居ってこともあるんじゃないか?」
 米田君はまだ信じることができない。
「それであっても、僕はもうこんなことはやめる。死んじゃったら元も子もない」
 鈴木君は頑固に言い張った。
「ち、分かったよ。じゃあ俺らで生け捕りにする役を引き受けよう。お前はここで、奴が現れたら網を落として捕まえろ」
「わ、わかったよ」
 渋々といった感じで作戦を承諾した鈴木君。
 父と米田君は先程の所まで戻って行った。
「いやがった」
 ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ。
 二人は程なくして幽霊を発見した。あいかわらずゆっくりした足取りだが、それほど遠くない所までやって来ている。
「おい米田、俺はどうすればいいんだ?」
 父は米田君に聞いた。