学園怪談

「おい斎条、仕掛けはバッチリだろうな?」
「なーに大丈夫、それよりもお前らもしくじるなよ」
 父は当時の仲間である米田君、鈴木君という二人の男子学生と共に学園に忍び込みました。そして2階の職員室の脇の階段付近に網を張って、生け捕りにする作戦を立てたのです。父は肝試しに成功した先輩たちから、とにかく動きが遅いから大丈夫という風に言われていたそうです。
 ……怖いですよね。捕まったら殺されちゃうんですよ? そんなの普通ならだれもやりたがらないものですけど、運動部の間ではそういった肝試しをやらなければイジメなんかの対象にされてしまうこともあったそうですよ。
 この日は父達3人の番だったそうで、昼間のうちに木工室に証拠となるボールが置かれたそうです。そして、3人はこれを取りに行かなければならなくなった。
「怖ええな~、本当に出たりするのかな?」
 鈴木君は怖いのか、そんな言葉を呟きながら2人の後ろを歩いた。
 夜の校舎は静まり返り、流しで止まり切らない蛇口から滴る水の音だけが、ポチャン、ポチャンと怪しげな音を立てた。電気は非常灯の明かりと、いくらかの電灯はついていたが、切れかかっているのか、チカチカと頼りなく、かえって不気味な演出となってしまっている。
 3人が木工室に入ろうとドアの前に立った時、廊下の隅、女子トイレの前で、背中を向けてうずくまる人影を見た。その人影は、足元に転がる一人の女子生徒の頬肉を引きちぎっては口に運んでいた。
「な、何だアレ?」
「ま、まさか……嘘だよな、用務員さんか誰かじゃないか?」
「で、で、で、でもひ人、ひひ人、人……喰ってる!」
 3人は一瞬でパニックに陥った。噂では聞いていても心のどこかでは信じていなかったからだ、そんなものいるはずがないと……。
 人影はゆっくりとした動作で立ち上がると、3人の方に振り返りました。
 ……!
 それは幽霊ではなく、本当にゾンビと形容するしかないものでした。