学園怪談

……静けさを取り戻した教室内で、私達はまだお互いに手を繋いだままイスに座っていた。
「俺達……助かったのか?」
 徹さんは手を放すと、イスに深々と腰掛けながら息を大きく吐いた。
「もう大丈夫。みんなの心が一つになって悪霊を追い返したんだ。こっくりさんにも感謝しなくちゃね」
 騒ぎの張本人の能勢さんは、先程までの恐怖を何とも思わない様子でウインクした。
「強い心を持っていれば、大丈夫。きっと大丈夫なんですよね」
 斎条さんが自分の言葉を繰り返す。
 私は信じられないような体験に、これは一瞬夢なのではないかとも思ったが、紙の上で止まったままの10円玉を見つめて、現実であることを静かに心に刻んだ。
「こんな事になってごめんよ。これ以上は危険なのかな? 怪談をすると霊が寄ってきやすいっていうし……まだ続けるかい?」
 能勢さんの質問に私は黙って頷き、そしてゆっくりと紙の上の10円が転がっている下の文字……『はい』の位置と同じ言葉を言った。