学園怪談

それは明らかに言葉となっっていた。
「え! 何これ!」
 私の言葉に10円玉がさらに激しく動き回る。
「……し……ね……し……ね……しねしねしねしねしねしねしね」
「うわあああ!」
 二文字を激しく往復する勢いが増し、教室のイスと机がガタガタと音をたてる。風もないのにカーテンが揺れた。
「きゃあああ!」
 徹さんと斎条さんは慌てて指を離してしまった。
「あ、ダメだよ! 指を離しちゃ!」
 すると、突然に目の前に大きなツノを生やした人間のような動物のような顔が浮かんで見えた。
 空気が陽炎のように揺れて、空中に出来た裂け目のようなところから徐々に体も現れて来ている。
「あ、悪霊だ! こっくりさんだと思って召喚したのは悪霊だったんだ!」
 能勢さんの声に反応するかのように、悪霊の影はどんどん姿を現していく。
「ど、ど、ど、どうすればいいんですか!」
 私は取り乱しながら、能勢さんに助けを求める。
「みんな、こっくりさんだ! 召喚で近くまでは来ている筈だ! こっくりさんをもう一度召喚して連れ戻してもらうんだ!」
 考えている暇はなかった。
「こっくりさんこっくりさん、出てきてください。出てきて悪霊を追い返してください!」
 能勢さんの言葉に、今度は3人全員が気持ちを一つにして祈った。
 そうしている間にも、悪霊は体の半分以上が出かかっていた。
「こっくりさんこっくりさん! 出てきてください! 悪霊を追い返してください!」
「お願いしま~~~す!!!!」
 徹さんの絶叫にも近い声を聞いたと思った途端。
 人間とも動物とも思えない悲鳴が教室に響き渡り、青白い光が悪霊を包んだ。
 そして私は見た。
悪霊を包み込むかのように空間の歪みに引きずり戻す、キツネのようなものの姿を……。