「沙織さんはね、実はその大学生に詩織さんよりも先に告白していたんだ。でも『詩織さんが好きだから』って断られちゃったみたいなの。彼女にとっては複雑だったかもしれないわ。見た目は自分とほとんど同じなのに、明るくて人気者の自分よりも内気なお姉さんの方を選ばれたんだもの。その理由はピアノしか思い当たらない。他に自分が負けているものなんてない。だったら、ピアノを弾けなくしてしまえばいい……そんな風に考えたのかもね。でも事件の後で、我に返ったのかな? 自分の指を差し出してでも助けたいって思ったのかな? そんなことをしてもグチャグチャな指じゃ神経は繋がらなかっただろうに……でもあるいは……」
「あ、あるいは?」
恐る恐る尋ねてみる。
「あのピアノには無念にも指を潰された詩織さんの呪いでもかかっていたのかもね。事件後の沙織さんは自分の起こした事件の記憶が曖昧だそうなの。それにその後も、あのピアノを弾いて指を怪我したという事件が何件も起こったものだから、ついにピアノは封印されてしまった」
私は普段見かける音楽室にあるピアノに、そんなエピソードがあったことを知りとても驚いていた。
「二人はその後どうなんでしょうか?」
「それなりに仲良くはしてるみたいだよ。もう詩織さんはピアノは弾かないし、沙織さんも歌うのは止めちゃったみたいだけどね」
私はそれを聞いて、少しばかりほっとした気持ちになった。
「事件の大学生は、やっぱりこんなことがあったためか、いたたまれなくなって姿を消したそうよ」
紫乃さんの話は、3人の男女が皆、身も心も傷ついたエピソードだった。
今でも音楽室には、もう誰も弾かなくなったそのピアノがある。最後まで伝えられなかった、少女の想い『乙女の祈り』と共に……。
「あ、あるいは?」
恐る恐る尋ねてみる。
「あのピアノには無念にも指を潰された詩織さんの呪いでもかかっていたのかもね。事件後の沙織さんは自分の起こした事件の記憶が曖昧だそうなの。それにその後も、あのピアノを弾いて指を怪我したという事件が何件も起こったものだから、ついにピアノは封印されてしまった」
私は普段見かける音楽室にあるピアノに、そんなエピソードがあったことを知りとても驚いていた。
「二人はその後どうなんでしょうか?」
「それなりに仲良くはしてるみたいだよ。もう詩織さんはピアノは弾かないし、沙織さんも歌うのは止めちゃったみたいだけどね」
私はそれを聞いて、少しばかりほっとした気持ちになった。
「事件の大学生は、やっぱりこんなことがあったためか、いたたまれなくなって姿を消したそうよ」
紫乃さんの話は、3人の男女が皆、身も心も傷ついたエピソードだった。
今でも音楽室には、もう誰も弾かなくなったそのピアノがある。最後まで伝えられなかった、少女の想い『乙女の祈り』と共に……。

