もちろん女子生徒からの人気は抜群で、この実習期間の間だけでも20通以上はラブレターをもらっており、毎日のように告白も受けていたが、彼は一向に気には止めていなかった。
そんな彼が急に目の前に現れて詩織さんに言った。
「この学園に来てから、ずっとキミのピアノを聴いていたよ。とっても素敵な音色だ。今は無理だけど、キミが卒業したら……俺と付き合ってくれないかな? もっとキミのピアノを聴きたいんだ」
……詩織さんだって一人の思春期真っ只中の女の子、そんなに素敵な男性の事を何とも思わない筈が無いよね。でも今までに一度だってそんな言葉を言ってもらえたことなんてなかった。だからかな、怖かったんだよね。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて立ち上がって、逃げるように音楽室を出て行った。
詩織さんの心の中は複雑な想いでいっぱいだった。膨らみ始めた彼への想い、そしてそれ以上に未知の世界へ足を踏み出すような不安。
普通なら、恋の悩みは友達どうしで色々と相談しあったりするんだろうけど、押しつぶされそうな彼女の心の内は友達に話されることはなかった。ただ一人、話すことが出来たのは自分と血を分けた姉妹の沙織さんだけだった。
沙織さんは人気者だし、今までにも恋愛経験もいくらかあるようだったので、詩織さんにはこれ以上ない有難い相談相手だった。
「……そっかあ。姉さんも、その人のことが好きになったのね?」
沙織さんは詩織さんの話を黙って全て聞き終えると、最後に笑顔で聞いてきた。
……コクリ。
詩織さんはぎこちない笑顔を見せながら、顔を真っ赤にして小さく頷いた。
「ふ~ん。姉さんにもついに春が来たのか~。よし、まかせて、私がうまくいくようにセッティングしてあげるから」
ちょっと強引に沙織さんは話を進めたけど、内気な詩織さんには勢いがなければ返事の一つも返せないことは明白だったの。
……そして、教育実習が終わる最終日に、沙織さんは音楽室で待つ詩織さんの元へ彼を連れて行った
そんな彼が急に目の前に現れて詩織さんに言った。
「この学園に来てから、ずっとキミのピアノを聴いていたよ。とっても素敵な音色だ。今は無理だけど、キミが卒業したら……俺と付き合ってくれないかな? もっとキミのピアノを聴きたいんだ」
……詩織さんだって一人の思春期真っ只中の女の子、そんなに素敵な男性の事を何とも思わない筈が無いよね。でも今までに一度だってそんな言葉を言ってもらえたことなんてなかった。だからかな、怖かったんだよね。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて立ち上がって、逃げるように音楽室を出て行った。
詩織さんの心の中は複雑な想いでいっぱいだった。膨らみ始めた彼への想い、そしてそれ以上に未知の世界へ足を踏み出すような不安。
普通なら、恋の悩みは友達どうしで色々と相談しあったりするんだろうけど、押しつぶされそうな彼女の心の内は友達に話されることはなかった。ただ一人、話すことが出来たのは自分と血を分けた姉妹の沙織さんだけだった。
沙織さんは人気者だし、今までにも恋愛経験もいくらかあるようだったので、詩織さんにはこれ以上ない有難い相談相手だった。
「……そっかあ。姉さんも、その人のことが好きになったのね?」
沙織さんは詩織さんの話を黙って全て聞き終えると、最後に笑顔で聞いてきた。
……コクリ。
詩織さんはぎこちない笑顔を見せながら、顔を真っ赤にして小さく頷いた。
「ふ~ん。姉さんにもついに春が来たのか~。よし、まかせて、私がうまくいくようにセッティングしてあげるから」
ちょっと強引に沙織さんは話を進めたけど、内気な詩織さんには勢いがなければ返事の一つも返せないことは明白だったの。
……そして、教育実習が終わる最終日に、沙織さんは音楽室で待つ詩織さんの元へ彼を連れて行った

