第9話 『乙女の祈り』 語り手 小野田紫乃
一周して紫乃さんの番だ。1話目は切ない絵にまつわる話だったけど、次は何の話をしてくれるのだろうか?
「さてと、じゃあ今度はちょっと怖いお話にするね」
紫乃さんはペロッと唇を舐めて濡らすと、急に神妙な顔になり声のトーンを落として話し始めた。
「あ、アナタはとっても綺麗な指をしてるわね……私なんかは結構ガサガサなんだ」
そういうと紫乃さんは掌を広げて見せる。
別に私の指とそれほど大きな違いがあるとも思えないが……。あ、しいて言えば爪の透明度は勝ったかな。
「でもあんまり綺麗な指だと詩織さんにもって行かれちゃうかもよ?」
……音楽室にはピアノが2台あるよね。そのうちの1台にはカギがかかっていて、鍵盤のフタは開かないようになってる。あれはなぜだか知ってるかな?
去年の卒業生の中に綾部さんっていう双子の姉妹がいたの。一卵性で見分けもつかないくらいに似ているんだけど結構性格は違うんだよ。
お姉さんは綾部詩織さん。ピアノが大好きで子どもの頃から音楽のセンスを磨いていて、将来はピアニストになるのが夢だった。内気な性格だけど物腰が柔らかくてとても妹想いの女性。
妹の沙織さんはピアノは途中で止めてしまったらしく弾くことはできないけど、その分歌はうまくて、将来は歌手になるのが夢。性格はお姉さんとは違って明るくて社交的、誰からも好かれる人気者だった。
二人はとっても仲の良い姉妹で、放課後には音楽室で詩織さんのピアノに合わせて沙織さんが歌ったりして過ごした日も多かった。
……そんなある日、詩織さんはいつも通り放課後に、一人で音楽室でピアノを弾いてた。
すると、そこに一人の男性が現れて詩織さんの前に立った。十日ほど前から教育実習にきている大学生だった。
真っ黒に日焼けした健康的な肌の色と整った顔立ち、背はスラリと高くてがっしりとしたスポーツマンタイプのさわやかな男性だ。
一周して紫乃さんの番だ。1話目は切ない絵にまつわる話だったけど、次は何の話をしてくれるのだろうか?
「さてと、じゃあ今度はちょっと怖いお話にするね」
紫乃さんはペロッと唇を舐めて濡らすと、急に神妙な顔になり声のトーンを落として話し始めた。
「あ、アナタはとっても綺麗な指をしてるわね……私なんかは結構ガサガサなんだ」
そういうと紫乃さんは掌を広げて見せる。
別に私の指とそれほど大きな違いがあるとも思えないが……。あ、しいて言えば爪の透明度は勝ったかな。
「でもあんまり綺麗な指だと詩織さんにもって行かれちゃうかもよ?」
……音楽室にはピアノが2台あるよね。そのうちの1台にはカギがかかっていて、鍵盤のフタは開かないようになってる。あれはなぜだか知ってるかな?
去年の卒業生の中に綾部さんっていう双子の姉妹がいたの。一卵性で見分けもつかないくらいに似ているんだけど結構性格は違うんだよ。
お姉さんは綾部詩織さん。ピアノが大好きで子どもの頃から音楽のセンスを磨いていて、将来はピアニストになるのが夢だった。内気な性格だけど物腰が柔らかくてとても妹想いの女性。
妹の沙織さんはピアノは途中で止めてしまったらしく弾くことはできないけど、その分歌はうまくて、将来は歌手になるのが夢。性格はお姉さんとは違って明るくて社交的、誰からも好かれる人気者だった。
二人はとっても仲の良い姉妹で、放課後には音楽室で詩織さんのピアノに合わせて沙織さんが歌ったりして過ごした日も多かった。
……そんなある日、詩織さんはいつも通り放課後に、一人で音楽室でピアノを弾いてた。
すると、そこに一人の男性が現れて詩織さんの前に立った。十日ほど前から教育実習にきている大学生だった。
真っ黒に日焼けした健康的な肌の色と整った顔立ち、背はスラリと高くてがっしりとしたスポーツマンタイプのさわやかな男性だ。

