学園怪談

 ……。
「それからすぐに救急車を呼んで、雅兄ちゃんを病院に連れて行きました。病院につくと緊急手術が行われ、その後1ヶ月程の入院生活を経て、雅兄ちゃんは退院しました」
 斎条さんは歯に物の挟まった言い方をする。
「お兄さんはどこが悪かったんですか?」
 私の言葉にニヤリと笑う斎条さんは、逆に質問してきた。
「手術で雅兄ちゃんのお腹から何が出てきたと思います?」
 ニヤニヤとしたいやらしい顔つきで私の解答を待つ斎条さん。
「まさか……子どもじゃないよね」
「ブーッ! ハズレです。なんと、スイカが出てきたんです」
「ス、スイカが?」
 私はあまりに驚いてしまい、それ以上声も出なかった。
「雅兄ちゃんは薬を適当に飲み続けていた。学園の保健室からも薬を勝手に持ち出して飲んでいたそうです。いったいどんな薬をどれだけ飲んだのか分かりません。おそらく田舎でスイカを食べた時に種を一緒に食べてしまい、変な薬の飲み方をしたために突然変異を起こした種から芽が出て、体に根付いてしまったのではないかと思います」
 その後を大ちゃんさんが割り込んで話す。
「で、体中の水や栄養をスイカの成長に取られてしまい、自分はどんどん干からびたということか」
 斎条さんが頷く。
「で、でもさ。スイカって種だけで簡単に出来るわけじゃないでしょ。土も何もない体の中なのに……それに、夏休み明けてすぐに大きく成長したって早過ぎないか?」
 能勢さんの言うことももっともだった。
「そこが不思議なんですよね~。絶対に有り得ないことのはずなんですよ。だから薬の副作用というか、飲み方は気をつけないと恐ろしいことも起こるんですね」
 まさか学園の中にあった薬が実のところ原因だったりして……。
 私がそんな考えをしている隣りで淳さんがつぶやいた。
「彼の体内から出てきたそのスイカ……どんな味がするんだろうね」
 私は思わず口元を押さえた。