第39話 『薬』 語り手 斎条弘子
さて、本来の順番に戻って斎条さんの番だ。
「みなさんは持病を何か持ってたりしますか?」
突然の斎条さんの言葉にみんなは黙って動かなかったが、やがて徹さんと淳さんが手を上げた。
「俺らは生まれながらの喘息なんだ」
淳さんも頷き、二人お揃いの吸入薬を取り出した。
「そうですか。私も含め、他の方達も比較的健康なようですね。じゃあ薬を飲む機会っていうのは少ないですかね」
しかし、今度はその言葉に能勢さんが手を上げた。
「俺は普段健康だけど、腹が下りやすいから下痢止めの薬はよく飲むよ」
斎条さんは満足そうに頷いて話し始めた。
……。
食べ物には賞味期限というものがあります。多くの人が間違う事として、『賞味期限』はあくまで食べるのに適した期限であって、『消費期限』とは別物ということです。でも賞味期限の切れた食べ物を食べたいとは思いませんよね。何だか傷んでそうだし。
でも、肉やパン、ケーキなどの日持ちしない食べ物には賞味期限はなく、最初から消費期限だけが記されます。
……じゃあ、薬はどうでしょう? 食べ物ではないけれど、体に取り入れるものですよね? そう、薬には『使用期限』が書かれています。
今回の薬にまつわるお話は私の従兄弟に起こった実話なんです。
……。
「そっかあ、もう来年には弘子も新座学園に入学か」
去年の夏、法事で田舎の千葉のお婆ちゃんの所に行った時のことでした。縁側に座る私の隣で、スイカを乱暴に食べながら従兄弟の雅明兄さんが言いました。
「うん。まあ、受験が通ればだけどね。でも仮に合格しても、入れ違いに雅兄ちゃんは卒業しちゃうね」
「ははは、そうだな。頑張れよ~、あそこは人数の多い学校だからライバルもいっぱいだ。それに何かにつけては順位付けもされるからな」
笑顔が素敵な従兄弟でした。今にして思えば、私が初めて恋心を抱いた相手は、雅兄ちゃんだったのかも知れません。
さて、本来の順番に戻って斎条さんの番だ。
「みなさんは持病を何か持ってたりしますか?」
突然の斎条さんの言葉にみんなは黙って動かなかったが、やがて徹さんと淳さんが手を上げた。
「俺らは生まれながらの喘息なんだ」
淳さんも頷き、二人お揃いの吸入薬を取り出した。
「そうですか。私も含め、他の方達も比較的健康なようですね。じゃあ薬を飲む機会っていうのは少ないですかね」
しかし、今度はその言葉に能勢さんが手を上げた。
「俺は普段健康だけど、腹が下りやすいから下痢止めの薬はよく飲むよ」
斎条さんは満足そうに頷いて話し始めた。
……。
食べ物には賞味期限というものがあります。多くの人が間違う事として、『賞味期限』はあくまで食べるのに適した期限であって、『消費期限』とは別物ということです。でも賞味期限の切れた食べ物を食べたいとは思いませんよね。何だか傷んでそうだし。
でも、肉やパン、ケーキなどの日持ちしない食べ物には賞味期限はなく、最初から消費期限だけが記されます。
……じゃあ、薬はどうでしょう? 食べ物ではないけれど、体に取り入れるものですよね? そう、薬には『使用期限』が書かれています。
今回の薬にまつわるお話は私の従兄弟に起こった実話なんです。
……。
「そっかあ、もう来年には弘子も新座学園に入学か」
去年の夏、法事で田舎の千葉のお婆ちゃんの所に行った時のことでした。縁側に座る私の隣で、スイカを乱暴に食べながら従兄弟の雅明兄さんが言いました。
「うん。まあ、受験が通ればだけどね。でも仮に合格しても、入れ違いに雅兄ちゃんは卒業しちゃうね」
「ははは、そうだな。頑張れよ~、あそこは人数の多い学校だからライバルもいっぱいだ。それに何かにつけては順位付けもされるからな」
笑顔が素敵な従兄弟でした。今にして思えば、私が初めて恋心を抱いた相手は、雅兄ちゃんだったのかも知れません。

