学園怪談

第38話 『間違われた男』 語り手 山﨑大介

「あっ!」
 突然、素っ頓狂な声を上げたのは斎条さんだ。
「ど、ど、どうしたの弘子ちゃん?」
 紫乃さんの声を聞いて、申し訳なさそうに彼女は言った。
「大ちゃんさんの順番……飛ばしてます」
 そこで全員が静まり返り、みるみる紫乃さんが真っ赤になっていく。
 ……あれ、確か淳さんが植物の話をして……その後が以心伝心で、用務員さんが来て……ピエロの話……あ、本当だ。
「ご、ごめんなさい! 私ったら、歌うことで頭がいっぱいですっかり気づきませんでした!」
 大ちゃんさんはニヤニヤしながら手で紫乃さんを制した。
「いいんだよ別に。全然気にしてないから。でもね、話そうと思っていた話のちょうど布石になるからほっといたんだ。いつ気がつくかな~ってね」
「話す内容の布石ですか?」
「そう、俺が話そうとしていたのはね、こんな感じでうっかり順番を間違われた男の話なんだけど……割り込んでもいいかな?」
 と、斎条さんに確認をとり、大ちゃんさんの話が始まった。

 ……。
何事にも順番っていうものは大事だよね。スーパーとかで特売の肉を買うために並んだおばちゃん達、自分の前の人でちょうど売り切れてしまった時なんかは、もう少し並ぶのが早かったら肉を安くゲットできた。宝くじの番号が発表されたとき、並んでいた順番があと一つ前だったら1億円が当たっていたかもしれない。飛行機の予約でオーバーブッキングの為に別の便に乗った。そうしたら始めに乗ろうとしていた便が墜落して……っていう風に、順番は一つ違うだけで大きく人生を左右することだってある。
……。