学園怪談

第37話 『ノロイのビデオ』 語り手 能勢雅亮

 用務員さんが去り、私達生徒だけの怪談が再び再開された。
「さて、それじゃあ僕の番だね。今は凄く科学技術の発展が速いから生活に必要な機械……とりわけパソコンなんかは直ぐに時代遅れになってしまうよね。音楽なんかも昔はカセットテープやレコードだったけど、今時そんなのは中古ショップとかじゃないと売ってないし、品質も悪いから欲しがる人は少ないよね。CDとかMDとかの何の媒体もなしにデータだけで再生可能なミュージックプレイヤーも出たくらいだ。映像なんかもCDーRやDVDなどが主流で、ハードディスクを使った家庭用デッキも登場した。そんな時代の流れに取り残されたように今だ現役で活動するビデオテープ。いいよねえあれ」
 能勢さんはカバンから一本のビデオテープを取り出した。
「な、何ですかそれ?」
 私はラベルも貼っていない黒光りするテープを見つめた。
「これかい? これはね……なんと、いま巷で話題の『ノロイのビデオ』だよ」
「そ、そんな……」
 ……ノロイのビデオ。ここ最近、新座ではこのビデオの話題でもちきりである。『見たら恐ろしいことが起こる』とか、『実際に死んだ人もいた』という噂だ。
「能勢さん何処からそんな物手に入れてきたんですか?」
「いや、なに。僕はまあまあ顔が広いからね、知り合いの女の子がゲットしたのを借りたんだ」
 能勢さんは上映の準備をしながら答える。
「あ、あのう。見るんですか?」
「何言ってるんだい。今ここで見なかったら持ってきた意味がないじゃないか。それとも怖くてチビリそうかい?」
 少しカチンと来る物言いだったのが私の自尊心に火を点けてしまった。……後から思えば、本当にまんまと能勢さんに乗せられてしまったものである。
「こ、怖くなんてないですよ! いいですよ、見ましょう」
 私の他に異論を唱える人はいなかった。
 そして、テレビ特有の砂嵐が数秒映った後、映像が始まった。