……しばらくして、ようやく泣き止んだ生徒が口を開いた。
「……この間、襲われた子は私の友達なんです」
「ほうか……。それは気の毒じゃったのう」
ワシは二人の関係など全く知らんから、ただ話を聞いてやることしかできず、黙って彼女の喋るままに任せた。
「彼女……サツキって言うんですけど、サツキは幼稚園の時からの友達なんです。」
そこまで話すと後は泣き崩れてしまった。
「あの怪物はな、目を合わせた者から眼球を奪うんじゃ。毎回なぜか右目ばかり標的にしておるのだ」
「右目……ですか? じゃあ、サツキは……」
ワシはうっかり余計なことまで喋ってしまったと反省したものの、知られてしまったのだからしょうがない。彼女に頷いてもう一度言った。
「ああ、そのサツキさんとやらは這いつくばる女に右目を奪われたんじゃ」
「そう……ですか」
生徒は怖いのか、身震いして話を聞いていた。友人が襲われて右目を失った。そして、今まさに自分の右目が狙われている。
……尋常の恐怖じゃないじゃろうて、生徒しか狙わん怪物を前にどうすることも出来んのじゃから。
……しばらくすると、廊下から這いつくばる女の気配が消えた。
「何だか急に静かになりましたね。もう何処かにいなくなったのかしら?」
突然彼女は立ち上がり、ドアに近づいて行った。
「ま、待て、まだドアを開けちゃいかん!」
「大丈夫ですよ、床には何もいませんよ」
ワシの静止も空しく、彼女は摺りガラス越しに廊下を確認すると、勝手にドアを開けてしまった。
……!
床には確かに何もいなかった。しかし、天井から頭一つ上のところの位置に……這いつくばる女の顔があった。怪物は床ではなく、廊下の壁に張り付いて待っていたのだ。
「い、いかん!」
ワシが廊下にたどり着くよりも速く、怪物は女生徒に飛びかかった。
……しかし!
「ギエエエエ!」
その直後、悲鳴を上げたのは怪物の方だった。
「うおおお!」
ワシは目を疑ったよ、慌てて逃げ去る怪物を、女生徒は怪物よりも恐ろしい形相で追いかけ始めたのじゃから。
「な、ななな、なんなんじゃ一体」
ワシはしばらく腰を抜かしていたが、しばらくしてようやく足が動き出した。一歩一歩慎重に歩みを進め、怪物と彼女の消えた方へと進んでいった。
「……この間、襲われた子は私の友達なんです」
「ほうか……。それは気の毒じゃったのう」
ワシは二人の関係など全く知らんから、ただ話を聞いてやることしかできず、黙って彼女の喋るままに任せた。
「彼女……サツキって言うんですけど、サツキは幼稚園の時からの友達なんです。」
そこまで話すと後は泣き崩れてしまった。
「あの怪物はな、目を合わせた者から眼球を奪うんじゃ。毎回なぜか右目ばかり標的にしておるのだ」
「右目……ですか? じゃあ、サツキは……」
ワシはうっかり余計なことまで喋ってしまったと反省したものの、知られてしまったのだからしょうがない。彼女に頷いてもう一度言った。
「ああ、そのサツキさんとやらは這いつくばる女に右目を奪われたんじゃ」
「そう……ですか」
生徒は怖いのか、身震いして話を聞いていた。友人が襲われて右目を失った。そして、今まさに自分の右目が狙われている。
……尋常の恐怖じゃないじゃろうて、生徒しか狙わん怪物を前にどうすることも出来んのじゃから。
……しばらくすると、廊下から這いつくばる女の気配が消えた。
「何だか急に静かになりましたね。もう何処かにいなくなったのかしら?」
突然彼女は立ち上がり、ドアに近づいて行った。
「ま、待て、まだドアを開けちゃいかん!」
「大丈夫ですよ、床には何もいませんよ」
ワシの静止も空しく、彼女は摺りガラス越しに廊下を確認すると、勝手にドアを開けてしまった。
……!
床には確かに何もいなかった。しかし、天井から頭一つ上のところの位置に……這いつくばる女の顔があった。怪物は床ではなく、廊下の壁に張り付いて待っていたのだ。
「い、いかん!」
ワシが廊下にたどり着くよりも速く、怪物は女生徒に飛びかかった。
……しかし!
「ギエエエエ!」
その直後、悲鳴を上げたのは怪物の方だった。
「うおおお!」
ワシは目を疑ったよ、慌てて逃げ去る怪物を、女生徒は怪物よりも恐ろしい形相で追いかけ始めたのじゃから。
「な、ななな、なんなんじゃ一体」
ワシはしばらく腰を抜かしていたが、しばらくしてようやく足が動き出した。一歩一歩慎重に歩みを進め、怪物と彼女の消えた方へと進んでいった。

