第34話 『食人花』 語り手 石田淳

 徹さんは先程からふてくされてしまっているので、次の淳さんの話で場の雰囲気を持ち直したいところだ。
「じゃあ僕の話だね。もう結構色んな怪談をしてきたけど、今回はまた学園内に話は戻るよ」
 淳さんは一呼吸置いた後、ゆっくりと話し始めた。
「これはね、学園の中庭に咲く花のお話」

 ……学園の中庭には色とりどりの花が咲き乱れている。これらの花は当然飼育委員の生徒達が世話をしているわけなんだけどね、僕や徹も飼育委員のうちの一人なんだ。
 似合わないって思うでしょ? まあ僕が花を育ててるのなんてイメージできないよね。でもね、花はいいよ。だってこっちが世話をしてやればしてやるだけ綺麗に咲いてくれるんだから。しおれかけている花に栄養剤や水をしっかりと与え、話しかけてやれば植物も応えて元気になってくれる。本当に植物は生きてるんだな~って実感する瞬間だね。
 ……でもね、植物は生きているだけに怖いって思うこともあるんだ。
 ……ある日、飼育委員が集まって中庭の花壇の雑草とりをしていた時、1年生の男子生徒の中にサボっている生徒が2人いた。まあ、おそらくこの生徒たちはジャンケンとかで負けて、やりたくもない飼育委員の仕事をやるはめになたんだろうけど、仕事を引き受けるからには真剣にやってもらいたいものだ。
「ああ~かったりい。こんな雑草抜いたからなんだっつーの」
「ホントホント。こんなの他に花好きな奴らがやってればいいのに」
 彼らは全くやる気がなく、少し抜いている雑草についても抜いちゃいけない花まで混じっていた。