俺は脱力感でいっぱいになり、何も言う気が起きなかった。
ただ、正体不明のパンツマン(ジャージの胸に『庄田』と大きくゼッケンが貼り付けてあったが)のユラユラと揺れるモノの姿が頭から離れず、その後、悪夢にうなされたのは言うまでもない。

……。
「…………」
 私は無言だった。
「結局、例の怪物はね、その群馬の学校のSFX部のイタズラであることが分かった。なんでもそこでは怪物の被り物とかをプロ並に作っているらしく、卒業して映画界に入る奴らも少なくないんだとさ」
「…………」
「だから自分達の力作を使って、俺達で反応を確かめてたって訳さ。まったく失礼な話だよ。そのためにありもしない怪談まででっちあげたんだから」
「…………」
「なんだよさっきから黙って。また俺の話はつまらなかったか? もういいよ。俺は怪談よりも、こういったボケキャラの方が性に合ってるんだ! 早く次の人の話に移ってくれ!」
「あ、は、はい……」
 私は我に返った。徹さんの話は確かにくだらないけれど、それ以上に今、私を始めとする徹さん以外の人たちは、話の間中、ずっと窓の外にポーズをとって立ち尽くしていた謎のパンツマンの姿に魅入っていたからだ……。
「じゃあ、次の話に行きましょう」
 私は目の前に揺れていた異物の存在を頭から追い払おうと、一人目を閉じて念仏を唱えていた。