学園怪談

 ……えーと、仮に僕や大里君が親から作られた最初の5人だとして全員が5件ずつ送る、これで子が25人、そんでもって25人がそれぞれの子、つまり孫を25人ずつ作る。25×25、じゃないや、親も合わせると30×25か? もう頭が混乱してきた。そんで出来上がる孫が750人で、その親達が30人だから780人がまた子を作る。それが125人分だから……。
 僕は何度も間違えながら、曖昧なネズミ算を繰り返していった。
「な、な、なんだよこれ!」
 最後に叩き出した数字は軽く地球の人口を越えていた。もちろん僕みたいに、こんなメールに関わらない人が多いだろうし、中には送る数が多すぎて挫折する人、同じ相手に複数送られたりもするだろうけど、それを差し引いても、軽く何千、何万を越える人に『不幸のメール』が届くであろうことは想像できた。
 それを証拠に、さっきから僕の携帯にはひっきりなしにメールが着信されまくっている。それも全てが『不幸のメール』だ。
 さすがに僕も怖くなった。電源を切ってしまえ! と思い、携帯に手を伸ばすと、先程の『不幸のメール』に、続きがあることがわかった。今まではこんなことはなかったから、つい見落としてしまったようだ。
『不幸のメール このメールが届いた人は、24時間以内に3125人の人に同じ内容のメールを出さないと……死にます……P・s 誰かを代わりに殺せば自分が死なずに済みます』
 その時、僕の携帯電話の着信音が鳴った。
 表示は非通知だった。
「も、もしもし」
 僕は、恐る恐る通話ボタンを押した。
「あ、あああ、あ、あのさ」
 知らない人の声だった。何か慌てているという事だけは伝わってくる口調だった。
「どちら様ですか?」
「メ、メ、メルアド教えてくれないかな? メル友になろうよ」
 僕は黙って通話を切った。携帯の電源を切った。すぐに布団を頭から被ると、ベッドに横になった。
 明日は日曜日だ。明日だけは僕は絶対に携帯の電源を入れない。誰とも会わない。家から絶対に出ない!