学園怪談

第31話 『不幸のメール』 語り手 能勢雅亮
 
 気を取り直して怪談が再開された。
「さてと、次はね、これだ」
 能勢さんが取り出したのは携帯電話だ。裏に女の子と一緒に撮ったプリクラが貼ってあるあたり、いかにも能勢さんらしい。
「不幸の手紙っていうメジャーないたずらがあるよね、それに似て不幸のメールなんてのも一時期流行ったことがある。今回の話はそれにまつわるお話」
 私は携帯をまだ持っていないことから、興味津々で話に聞き入った。

 ……今や携帯電話は中、高校生で当たり前のように持っているよね。一昔前なら有り得ない光景らしいけど、それが普通になってるから、僕らは何の疑問も持たずに使っている。で、メールもする訳だけど、そうするといるんだよね~、いたずらメールを流す奴が。
「お、メールだ」
 ある日、受験勉強をしていた僕の携帯に知らないアドレスからメールが届いた。
『不幸のメール このメールが届いた人は、5日以内に5人の人に同じ内容のメールを出さないと不幸が訪れます』
「何だよこれ! むかつくな~、変なメール送るなっつーの」
 僕は無視したよ。だって不幸のメールなんて良いことじゃないしね、そんなもの回して人の迷惑になりたくないしね。
 無視することに決めた次の日、学園で同じクラスの大里君から相談があった。
「ねえねえ能勢さあ」
 大里君は本当に普通のクラスメイト。いるでしょ、一緒に遊ぶ程ではないけど話を適度にする友達ってさ。彼はそんな感じの人。
「どうしたの?」
「実は昨日さ、俺の携帯に『不幸のメール』が届いたんだよ」
「あ、それ来た。俺にも来たよ」
 その内容を聞くと、文章と送信先まで一緒であることがわかった。
「流行のいたずらかな?」
「でしょ、僕は気にしないよ。だって迷惑じゃんこんなの」
 僕の言葉に、一瞬だけ大里君は傷ついたような表情を見せた。
「あ、もしかして、もう5件送ったの?」
「あ……ああ……。だって、怖いじゃんよ、もし本当に不幸になったりしたらさ」
 僕は特に彼を責める事はしなかった。やっぱり脅迫じみた事が書かれれば、彼のように驚いて従っちゃう人もいるだろうしね。