学園怪談

第29話 『蘇生術』 語り手 小野田紫乃
 
 紫乃さんの番だ。いつになく暗い顔をしているのが気になるが、今回はどんな話をしてくれるのだろうか。
「私の話は感動系とかばかりで、あんまり怖くない話が多いよね。でもね、私にだって怖い話はあるんだよ。今回は私の知る数少ない怖い系の話をしてあげるね」
 私は前置きからして、さっきまでとは空気の違う紫乃さんに少し戸惑いつつも、背筋をしっかりと伸ばした。

 ……長くても短くても人間には生まれた瞬間に寿命が決まっている。これは運命。100歳まで長生きする人もいれば、産まれたての赤ちゃんのまま直ぐに死んじゃう人もいる。これは運命。運命には絶対に逆らえない。仮に事故や自殺で命が失われても、死んでしまったならそれがその人の寿命。運命なの。
 そんな運命に抗うと恐ろしい未来が待っているわ……。
「美由紀! 待ってよ美由紀!」
「博人、さようなら。元気でね」
「待ってくれ! 俺にはお前がいないと駄目なんだ! 美由紀!」
 博人は暗闇の中で、必死に恋人の美由紀を追いかけた。
「だめ、こっちに来ないで。私達は別れなきゃいけないの!」
「嫌だ! ずっと一緒だって、いつまでも一緒だって約束したじゃないかよ!」
 どれだけ走っても二人の差は縮まるどころか広がってしまう。
「美由紀いいい!」
 博人は手を伸ばしたまま、背後からの光に飲み込まれていった。
 ……博人は目を覚ました。そこはいつもと変わらない自分の部屋、自分のベッドの上だった。
「……美由紀……」
 そして博人は夢で追いかけていた最愛の女性の名をつぶやいた。