次の日、土方君はゴミ箱の中に道端で捨てられていた子猫を1匹入れておいた。
「どうだ、これはさすがにビビルだろ」
 今日が当番の土方君はいつになく興奮した様子でゴミ箱を持っていった。
「おい土方、やめた方がいいんじゃねえの」
 一緒にいた友人達も、さすがにやりすぎじゃないかと心配になった。
「んだよ、ビビッてんじゃねえよ」
 焼却炉の前では昨日と変わらない姿で、変わらなく無表情なおじさんがゴミの処理をしていた。
「なんか聞こえない?」
「え、気のせいじゃないの?」
 先に並んでいた生徒達は、ゴミ箱から僅かばかりに聞こえた子猫の声を聞いた。
「はい」
彼はぶっきらぼうにゴミ箱をおじさんに渡した。
 ガサアアア。
 何の躊躇いもなく焼却炉に子猫入りのゴミが放り込まれた。
「ニャアアアアア!」
 火の中にくべられた子猫は炎に苦しみながら狭い焼却炉の中を駆け巡った。
「うそ! ヤダ! 焼却炉に動物が入ってる!」
「きゃああ!」
「そんな、嘘だろ……」
「ひいいい! 俺は悪くねえ! 土方がやったんだ」
 土方君を突き飛ばすようにして友人も、周りの生徒達もゴミ箱を放り出して逃げ出した。
 猫は炎で焼かれ、あちこちに肉の焼ける酸っぱい匂いと煙が立ち込めた。
 それでもおじさんは顔色一つ変えず、手前のゴミ箱から順番に子猫の鳴き叫ぶ焼却炉へと放り込んでいく。