第27話 『焼却炉のおじさん』 語り手 石田淳

「はあ~っ、なんで急にお腹が下ったんだろう」
 トイレから徹さんが帰ってきた。
 私は水筒を背中に隠すと、話を逸らす為に急いで次の淳さんに話を聞いた。
「さ、淳さん。ここらでピリッと拳のきいた話をお願いしますね」
「うん。わかった。じゃあ始めるね」
「何かさっき麦茶を飲んでから……」
「徹さんは黙ってて下さい!」
 私は徹さんを制し、突然の私の大声にビックリしたような顔をしている淳さんに続きを促した。
「じゃあ、話すね。今度の話は学園の裏庭にある焼却炉の話だよ」
 私は裏庭にある古びた焼却炉を思い浮かべた。
「……あの焼却炉はこの学園が創設されて以来、毎日のように使われて大量のゴミを燃やしてきた。基本的には教室のゴミ箱のゴミしか燃やしてはいけないことになっているけど……長い歴史の中ではゴミ以外のものも結構燃やされてきたって話だよ」

 ……ゴミを燃やす時間が限られているのは知ってるよね。掃除の時間帯の僅か30分くらいの間しか焼却炉は使用されない。そして、その焼却炉でゴミの処理を行ってくれるおじさんいるよね? 
今のおじさんじゃなくて、7年前までは別のおじさんがいたんだ。
そのおじさんはなんて言うか……そう、ちょっと目が濁ってるんだ。何かの病気なのか、それとも生まれつきなのか。目が薄い緑色に濁っていて、失礼だけどちょっと気味が悪い人だったらしい。
 市の方から派遣で来ていた人らしいけど詳しくは知らない。おじさんは凄く無愛想で生徒が挨拶しても一言も喋らずに黙々とゴミの処理をするだけだった。だから、僕達生徒との関わりも殆どない人の筈だけど……でもね。
「これをお願いします」
 7年前のある日、いつも通りに教室のゴミ箱を持って並ぶ生徒達の中に、1年生の土方君っていう生徒がいた。