学園怪談

第24話 『半身男』 語り手 能勢雅亮

 気をとりなおして次の能勢さんの話に入る事にした。
「さて、息抜きも終わったことだし、また怖い話をするとしよう。今回は大ちゃんの話した合宿所にまつわる別の話だよ」
 同じ運動部員の大ちゃんさんが、ニヤリと笑うのが見えた。
「あの合宿所ではね、冬にしか現れない幽霊も存在するんだ」
「冬にしか現れない幽霊?」
 私は少し興味を惹かれて聞き返した。
「そう。しかもその幽霊は……上半身だけの幽霊なんだ」
「上半身だけ?」
 私は足のない幽霊を想像したが、もともと幽霊は足のないものが通説だからか、それほど怖い姿は浮かんでこない。
「じゃあ話すね……」

 ……半身男。例の合宿所で冬にだけ現れる幽霊だ。この男は冬に合宿所に稀に姿を見せるんだけど、その姿の凄まじさときたら半端じゃない。これは僕の所属する剣道部が去年の冬休みに合宿を行ったときの話なんだけど……。
「姿勢を正して! 構え!」 
 主将の林の声に合わせて、俺達剣道部員は早朝の体育館で稽古に励んでいた。冬の朝のフロアーは裸足には辛くて本当に泣きそうなくらいに厳しい練習だった。でも3年生も引退して、僕達当時の2年生が率先して行う初の合宿だったからね、泣き言も言ってられなかった。
「次、打ち込み始め!」
 僕達は1年生も交えて3日間の合宿スケジュールを順調に続けた。
 ……そして、最終日の夜のこと。