桜の花びらが降る頃、きみに恋をする


歩いて5分もしないうちに、猫カフェに到着した。

フロントで受付を済ませて、猫たちがいるフロアに入ると、もう緊張なんてどこかへ吹き飛んだ。

「えっ、待って! 可愛いすぎる!」

店内には、20匹以上の猫たちがいて自由に動き回っていたり、ごろんと寝転がっていたり、キャットタワーに登ったりしている。

しかもこのお店は、猫たちに触れ合えるだけでなく、漫画が読めたりフリードリンクがあったりとゆったりくつろげれる空間になってる。

初めて来たけど、凄く素敵な場所!

‥‥‥にゃー。

声がして足元を見てみると、頬をすりすりしてくる茶色い子猫。

「なにこの子! 可愛い〜!」

しゃがんで子猫の頭を優しく撫でると、よっぽど撫でられて嬉しいのか満足そうな笑みをしてくれる。

それが、なんとも可愛いらしい。

隣に座った陽向くんがクスリと笑った。

「‥‥‥?」

不思議に思って陽向くんを見てみると、どこか懐かしげに私を見つめていた。

「蒼って、本当に動物が好きなんだね」

「‥‥‥えっ?」

どうして、私が動物が好きなこと分かったんだろう?

話したことなんてないはずなのに。

そう聞き返すと、陽向くんはしまった!という表情をした。

「ご、ごめん! 今のは、完全なる俺の思い違い。俺はなに言ってるんだろうね」

恥ずかしそうにガシガシと頭を掻く陽向くん。

その様子がなんだかおかしくて笑ってしまった。

「ふふっ。その思い違いあってるよ。動物好きだよ。たくさんの愛情を注げばちゃんと受け止めてくれたり、言葉にしなくても心で通じ合えてる気がして嬉しい気持ちになるの。それに、可愛くて見てるだけでも癒されるんだ」

「俺にも分かる気がするよ。その気持ち」

その言葉通り、猫を撫でる陽向くんのその瞳は、優しい目をしている。

陽向くんも動物が好きなんだね。

そうじゃなきゃ、この場所に連れて来たりしないか。