陽向くんたちとクレープを食べに行ってから、数日が経ったそんなある日の夜。

私はというと、あの日に捨ててしまった笑顔を徐々に取り戻しつつあった。

「ただいま」

壁掛け時計の針が夜の10時半を指した頃、お母さんが仕事から帰ってきた。

いつもは11時過ぎることがよくあるけれど、今日は飲食店の仕事が早く終わったみたい。

「お母さん、おかえりなさい。ご飯、温めるね」

「いつもありがとね」

「ううん!」

冷蔵庫に入れていたおかずを取り出して、レンジで温める。

料理は、だいたい私が作っている。

いつものように1人でご飯を食べて、お母さんが帰ってくるまでのんびり過ごしたり、課題を済ませたりしている。

料理以外にも掃除とか家事全般私の担当。

お母さんは仕事掛け持ちで家庭のために一生懸命頑張っているから、家のことは私に任せてお母さんには楽させたいと思っている。

「蒼、最近、学校はどう? 友達できた?」

「うん! 友達できたよ」

「良かった! 最近、蒼が明るくなってきて嬉しいわ」と喜ぶお母さん。

私があの日から中学卒業まで友達を失いずっと1人でいたことをお母さんは知っている。

だから、そんな私を見兼ねたお母さんは引っ越しを決めた。

ずっと、気になっていた。

なぜ、お父さんが亡くなったこの町にしたのか。