そして、今回も誘われてどうしようかと少し悩む。

また断ろうかなと思ったが、口からでた言葉は‥‥‥。

「行きたい」

だった。

正直あまり食欲なんてないけれど、クレープならそんなに量がないし食べれるかもしれない。

それに、陽向くんが一生懸命考えてくれているんだもん。

こんな私のために。

「い、今、『行きたい』って言った? 俺の聞き間違いじゃないよね⁉︎」

誘った本人が1番驚いている。

彼の問いにコクリと頷いてみせると、陽向くんはまるで花が咲いたかのようにぱぁっと明るい笑顔を浮かべた。

「良かった! 蒼がやっと行く気になってくれた! 美菜たちが知ったらきっと喜ぶよ」

本当は陽向くんが1番喜んでいるのに、美菜ちゃんたちのことを思う陽向くんはやっぱり優しい。

「ところで、蒼は“幻のクレープ屋さん”って知ってる?」

「‥‥‥幻のクレープ屋さん?」

初めて聞くお店。

幻がつくほど、クレープが幻なのかな?

「この町では、有名なクレープ屋さんなんだけど、第4水曜日にしか販売してないから、その名の通り“幻のクレープ屋さん”って呼ばれてるんだ」

幻はそう言うことか。

って、今日が第4水曜日だ。

「それに、いろんな種類があってどれも美味しいんだよ。蒼、きっと、びっくりするよ」

そう話をしてくれる陽向くん。

クレープを食べることを今か今かと楽しみにしていることがひしひしと伝わってきた。