* * *

「蒼ちゃん、一緒に帰らない?」

その日の放課後。

私のところに、美菜ちゃんが来てくれた。

「‥‥‥ごめん。先に帰ってていいよ」

「えっ? どうして?」

「ちょっと、寄るところがあるから」

本当は、寄るところなんてない。

ただ、今は1人になりたかった。

「分かった。じゃあ、蒼ちゃん、また明日ね!」

「うん。また明日」

美菜ちゃんに小さく手を振り返して、スクールバッグを手に持った。

「なぁ、陽向! 一緒に帰ろうぜ」

と琉輝くんが陽向くんを誘う声が聞こえた。

「ごめん。俺も寄るところがあるから」

「えぇー、陽向も‥‥‥しょうがないな。琉輝と2人で帰ることにするか」

「美菜、しょうがないってなんだよ? ほんとは、俺と2人っきりで帰れて嬉しいくせに」

「全然嬉しくないもん!」

そんなやりとりを遠くに聞きながら、私は教室を出た。