「‥‥‥んっ」

ゆっくり目を覚ますと、私はなぜかベッドに横になっていた。

でも、自分の部屋じゃない。

目の前には、見慣れない白い天井。

窓の方を見ると、夜なのかカーテンが閉めてあった。

「蒼、目が覚めたんだね」

ベッドの脇には、なぜか目を真っ赤に腫らしたお母さんが、私を見るなり安堵した表情を浮かべた。

「‥‥‥お母さん、ここはどこ?」

自分が置かれている状況がうまく飲み込めなくてお母さんに訊ねた。

「病院よ。あの事故の後、近くにあったこの総合病院に搬送されたの」

‥‥‥事故? 病院? 搬送?

そこで、ハッとした。

ーー『蒼‼︎ 危ない!』

水族館の帰り道、車に轢かれそうになっていたところをお父さんに助けてもらったんだった!

その後、地面に倒れて気を失ってしまっていた。

だから、病院に搬送されたんだ。

ようやくその経緯が分かった。

でも、さっきからお父さんの姿がどこにも見えない。

「お父さんは、どこにいるの?」

不安になってお母さんに聞くと、お母さんはみるみるうちに悲しむような暗い表情をした。