【陽向 side】
琉輝と蒼が教室を出ていった今、徐々にクラスメイトたちが帰って行き、教室には俺と美菜だけが残った。
しーんと静かさが漂う。
俺は、ゆっくりと美菜の元へ向かった。
「あのさ、美菜‥‥‥」
「なに?」
俺に対する態度は冷たくて、あからさまに不機嫌だということがひしひしと伝わってくる。
美菜を怒らせたのは俺が原因だ。
「この前はごめん。俺、なんにも分かってなかった」
「だから、なに? それを伝えに来ただけじゃないでしょ」
「‥‥‥うん」
美菜に本当のこと話すために来た。
そのことを美菜は、なんとなく気付いてる。
長年の付き合いだから、ちゃんと話せばきっと分かってもらえるはず。
「今までずっと隠してたこと伝えるよ。蒼のことも。だから、最後まで聞いて欲しい」
ゆっくりと美菜が頷いたのを見て、あの日の出来事を話した。
事故直後のことを蒼は覚えてないことも、そして俺が誰を好きなのかも全部伝えた。
「‥‥‥陽向、ごめん。私、勘違いしてた」
誤解がとけて、いつもの美菜に戻る。
「私の方こそ最低だね。陽向に酷いこと言っておきながら、陽向のことなにも分かってなかった」
「‥‥‥美菜」
「陽向は、蒼のこと裏切ってなんかなかったんだね」
嬉しそうに笑う美菜の目からは、一筋の涙が零れた。
それと同時に、教室の扉が開いた。



