向かったのは、人通りが少ない渡り廊下。

「ごめんね、蒼ちゃん。急に呼び止めて」

「ううん。それより、話って?」

「陽向のことなんだけどさ‥‥‥」

やっぱり。

「前にさ、陽向は誰かを探してる人がいたって話したの覚えてる?」

「うん」

「それってさ、つまり蒼ちゃんのことだったんだよ」

「えっ?」

琉輝くんから知らされた真実に、自分の耳を疑う。

陽向とは、入学式で初めて出会った。

それまで、陽向と会ったことないし、なぜ私を探してたのか理由が分からない。

「今日の昼休み、陽向から全部聞いたんだ。あの日の出来事も」

あの日の出来事?

それは、私の出来事で陽向には関係ないはずじゃあ‥‥‥。

「蒼ちゃんは覚えてないかもしれないけど、陽向と蒼ちゃんは、ずっと前に出会っていたんだよ」

「えっ‥‥‥?」

ずっと前に出会ってる?

「それから、陽向はずっと蒼ちゃんを探してた。蒼ちゃんのこと忘れられなかったんだよ」

「それって、どういうこと?」

そう尋ねた私に、琉輝くんは言葉を濁した。

「‥‥‥ごめん。それ以上は、あいつに口止めされたから詳しく言えない。けどさ、蒼ちゃん。辛いと思うけど思い出してよ。本当の“あの日の記憶”を」