桜の花びらが降る頃、きみに恋をする


「‥‥‥俺だって、本当は思い出して欲しいよ。ずっと、蒼に隠してるのも辛い」

「だったら、蒼ちゃんに正直に話せ」

「話したいと思ってる。けど、避けられてしまうんだよ。口も聞いてくれないし、目も合わせてくれない。もう、完全に嫌われてしまった」

「違う!」

俺の言葉をすぐさま琉輝は否定した。

ーー『お前、完全に嫌われてるじゃん』

さっきは俺のことからかってきたのに、なにが違うと言うのだろう。

「蒼ちゃんは、本当はお前のこと嫌ってなんかいない! 好きだからこんなにも苦しんでるんだろうが!」

「えっ‥‥‥?」

今、好きって‥‥‥?

聞き返した俺に、琉輝は声を荒げた。

「だから! お前を嫌う理由が“好き”って以外あり得ないんだって言ってんだよ!」

次の瞬間、「あっ、やべっ!」と慌てて口元を押さえた琉輝。

「それ、蒼が言ったのか?」

すかさずそう尋ねると、琉輝は口元に手を当てたまま答えた。

「‥‥‥俺が言ったこと蒼ちゃんには内緒にして」

琉輝の言葉で確信へと変わった。

ーー『‥‥‥こういうの好きな人にしか、しちゃいけないんだよ』 

ーー『もうなにも聞きたくないよ! お願いだから、これ以上私に優しくしないで!』

蒼は、好きだから俺の前から離れようとしてるってこと?

だから、蒼はあんなにも怒ってあんなにも苦しんでた。

俺は、蒼の気持ちなにも分かってなかった。

だから、美菜が怒るのも当然だった‥‥‥。