「俺には、どうしても守らなきゃいけない人がいます」

‥‥‥守らなきゃいけない人?

どうしても?

私の頭の中には、はてなマークがたくさん浮かぶ。

「それって、一ノ瀬くんはその子のことが“好き”ってこと?」

先輩はそう結論付けて訊ねると、その質問に陽向はゆっくりと頷いたことが分かった。

「はい。ずっと前からその子のことが好きなんです」

えっ‥‥‥?

今、“ずっと前から”って言った?

ーー『俺は、あの子になにもしてあげられなかった。助けたかったのに、守ることもできなかった‥‥‥ただ、泣き崩れるあの子を抱きしめることしかできなかった』

陽向は、あの子になにもできなかったことを後悔していた。

ずっと探していた。

今でもあの子のことが好きだったんだ。

だから、告白を全部断ってた。

どうしても守らなきゃいけない人も‥‥‥。

全部、その子のためだったんだ。

もうイヤと言うほど全部が繋がる。

陽向が好きなのは、私じゃない‥‥‥。

陽向の隣にいるべき人は、私じゃない‥‥‥。

高校の入学式で初めて出会った私じゃない‥‥‥。

「だから、俺のこと諦めて下さい」

陽向は、きっぱりと言った。

先輩に向けた言葉なのに、まるで私に向けられているかのようで心にぐさりと刺さって物凄く痛い。

「‥‥‥わかった」

先輩は、泣きながら走り去ってしまった。

しばらくすると、陽向もゆっくりと校舎の中へと向かって行く。

だけど、私だけがその場から動けなかった。