「い、一ノ瀬くんを初めて見たときから気になってました。好きです! 私と付き合って下さい!」
先輩は勢いよく頭を下げて右手を差し出した。
その瞬間、緊張が走った。
心臓がバクバクしてうるさい。
陽向が今、どんな顔をしているのかが分からない。
返事はどうするのだろう?
そう思っていると‥‥‥。
「ごめんなさい。その気持ちには、応えられません」
陽向は、頭を下げて丁寧に断った。
ーー『陽向は告られても全て断ってるんだよ』
美菜が言っていたことって、本当だったんだ。
「どうして? 彼女でもいるの?」
振られてしまった先輩はうっすら涙を浮かべて、陽向に問う。
「彼女は‥‥‥いません」
なんだか歯切れ悪く言う陽向に、先輩はさらに問い詰めた。
「だったら、どうして?」
しばらく沈黙が続いた後、陽向は静かに口を開いた。