「ごめん‥‥‥本当にごめんな‥‥‥」

その肩は小さく震えていて、私は包み込むように陽向を抱きしめた。

「陽向、謝らないで。その子は、きっと抱きしめられただけでも凄く救われてると思うから。それに、私だってそうだよ。あの時、屋上で泣いてた私に陽向は抱きしめてくれた。陽向がいてくれて凄く救われたんだよ。だから、陽向が謝ることなんてなにもないよ」

優しく言葉を投げかけながら、彼の大きな背中を摩った。

みんなの前では笑顔でいることが多いけれど、その裏で何年にも渡る後悔と心の傷をずっと抱えていた陽向に私がどれだけ寄り添ってあげられてるかは分からない。

ただ、今の私にできることは陽向が『もう大丈夫』と言ってくれるまで抱きしめ優しく言葉で慰めることだった。

「ありがとう。蒼にそう言ってもらえて嬉しいよ」

目に溜まった涙を拭った陽向の表情は、笑顔だった。

もしかしたら、陽向は私と同じ境遇だったから私に言えずにいたのかもしれない。

だから、秘密だって隠そうとしたのかな。

陽向の過去のことを知れた今、陽向との見えない壁が壊れて、もっと距離が近くなったような気がした。