桜の花びらが降る頃、きみに恋をする


そして、向かったのは陽向の家。

ここじゃないと話せそうにないからと彼が言ったからだ。

ご両親は今日もお仕事みたいで、部屋には陽向と2人きり。

テーブルの前に並んで座ると、静かに陽向が言った。

「今から話すこと、あまりいい話じゃないんだ。それでも聞いてくれる?」

「うん。もちろんだよ」

頷くと、陽向はぽつりぽつりと話してくれた。

「‥‥‥あれは、まだ小学生だった頃。休日、家族とお出かけに行った帰り、俺は目の前で事故の瞬間を見てしまったんだ。車に轢かれる瞬間を」

「‥‥‥っ」

陽向の言葉に、心に衝撃が走った。

私には、陽向の気持ちが痛いほど分かる。

まだ小学生だったとしても、とてもショッキングな出来事だったに違いない。

忘れてしまいたいのに、長年経ってもなかなか頭から離れてくれないのを知っている。