「それは‥‥‥秘密かな」
また、陽向との間に見えない壁ができた。
ーー『いつか話す時が来たら、ちゃんと伝えるから。それまで待っててくれる?』
ごめんけど、私、もう待てないよ。
陽向との間に壁なんか感じたくない。
そう思った私はその場に立ち止まって一歩先を歩いた陽向の裾をきゅっと掴んだ。
「蒼?」
驚いた陽向は立ち止まって私を振り返る。
「‥‥‥うして」
「えっ?」
「どうして、秘密だって隠そうとするの? 私は、陽向のことが知りたいのに」
好きだから、陽向のことが知りたいのに。
「陽向も1人で抱え込まなくていいんだよ」
今まで誰にも言えなかったこと、私には話してほしい。
ーー『蒼の全部、俺が受け止めるから』
陽向は私の全部を受け止めてくれた。
だから‥‥‥。
「今度は、私が陽向のこと全部受け止めたい」
陽向にどんな辛い過去があろうとしても、私は陽向の全部を受け入れたい。
陽向は一瞬驚いて、その後、悩むように少し困った表情をしたが意を決したのだろう。
「分かった。蒼に話すよ」
と言った。
「だから、場所だけ変えてもいい?」
陽向の提案に私は小さく頷いた。



