それから、琉輝くんとは別れて頭の中を一旦整理することにした。
美菜と琉輝くんと話しを通して分かったことは、陽向には小学3年生の時になにか辛い出来事があったこと。
そして、中学卒業しても大切な人を探していたこと。
美菜と琉輝くんも詳しいことは分からなくて、謎はますます深まるばかり。
やっぱり、直接陽向に聞くしかないのかな。
そう思った私は、その日の帰り道、隣を歩く陽向に恐る恐る尋ねてみることにした。
「あ、あのね、陽向に聞きたいことがあるんだけど」
「ん? どうした?」
「前に陽向も落ち込むことがあるって言ってたでしょ? 私、美菜たちより陽向のことあまり詳しくないし、陽向が落ち込んでる姿なんて見たことない。そこで、どんなことで陽向は落ち込んだりするのかなってふと気になって」
言葉を選びながらそう尋ねると、陽向は少し考えたあと真剣な表情でこう言った。
「大切な人に記憶を思い出してくれないことかな」
「えっ?」
琉輝くんの話もあってか“大切な人”のワードに反応してしまった。
その人は要するに、記憶喪失なのかなと深く考えていると「なんて、冗談だよ」と言われてしまった。
「えー! 冗談に聞こえなかった! ちょっと真面目に答えてよ」
頬を膨らませ陽向に抗議すると、先日見たあの悲しそうな表情を一瞬見せた後、陽向は言った。



