桜の花びらが降る頃、きみに恋をする


「ねぇ、琉輝くん。ちょっといいかな?」

「おう、どうした? 蒼ちゃん」

「陽向のことでちょっと知りたいことがあって」

琉輝くんにも聞いてみることにした。

「さっき美菜と話してたんだけど、昔、陽向になにがあったのかなって思って。琉輝くんは、なにか知ってる?」

そう尋ねると、琉輝くんは静かに首を横に振った。

「ごめんけど、俺も分からないんだよな。いくら幼馴染みだから親友だからって言っても陽向は全然教えてくれなかった。今も話そうとはしない」

陽向が隠している過去は、きっと美菜や琉輝くんにも誰にも言えないぐらい辛い出来事なのかな。

「ただ、1つだけ分かることは‥‥‥」

「‥‥‥?」

琉輝くんのその言葉の続きが気になる。

「陽向は誰かを探すようになったんだ。小学校卒業しても中学校卒業しても。きっと、陽向にとって忘れられないほど大切な人だったんだと思う」

「‥‥‥大切な人」

少し胸がチクリと痛んだ。

陽向が探している人は一体どんな人なんだろうって。

「まぁ、今は見つけたかは知らないけど探していないみたいだよ」

「そ、そうなんだ」

琉輝くんのその言葉に少しほっとした。

「って、蒼ちゃん。もしかして、陽向のこと好きになったりして?」

「‥‥‥! そ、そんなんじゃないよ」

慌てて誤魔化そうとするけど‥‥‥。

「ふははっ! そんな分かりやすいウソつかなくても大丈夫だって!」

恥ずかしくて顔が真っ赤になる。

前に、陽向にも言われたっけ。

ーー『蒼、嘘つくの下手すぎ。見るからにバレバレだもん』

なぜ、私はこんなにもウソをつくのが下手なんだろう?

「陽向には言わないから安心してよ」

「う、うん」

今はただ、琉輝くんが言わないことを願うばかり。