桜の花びらが降る頃、きみに恋をする


「あのね、美菜。陽向のことで教えてほしいことがあるんだ」

次の日、学校で美菜に聞いてみることにした。

幼馴染みだから、私より陽向のこと詳しいと思ったから。

「陽向って、昔、なにかあったの?」

そう聞いてみると、美菜は少し暗い顔をして「‥‥‥あったよ」と呟いた。

「あれは、確か小学3年生の時だったかな」

そう言われて、私がお父さんを失った時も小学3年生だったことを思い出す。

「陽向になにがあったかは知らないけど、蒼と同じように笑顔になれない時期があったの」

私には全然想像がつかない。

それほど、陽向がよく笑っているのを見るし、まるで太陽みたいなキラキラとしたオーラを放っていて落ち込んだ様子なんてあまり見たことがない。

だけど、心のどこかでは簡単に触れてはいけないようなものをずっと隠しているような気もする。

「その頃の陽向は、ずっと落ち込んでいて、なにかを1人で思い詰めてた。理由を尋ねても陽向は全然教えてくれなくて今もまだ分からないままなんだけど、きっとなにか辛い出来事でもあったんじゃないかなって思ってる」

‥‥‥“辛い出来事”。

もしかすると、昨日、陽向は教えてくれなかったけれど、陽向のご両親となにか関係あったりするのかなとふと思った。