桜の花びらが降る頃、きみに恋をする


「どうして?」

そう尋ねると、少しの間、沈黙が続く。

悲しそうな顔したまま陽向がぼそりと言った。

「‥‥‥ごめん。それは言えない」

「えっ‥‥‥」

陽向との間に見えない壁ができたように見えた。

せっかく、夏祭りで距離が縮まったんじゃないかなって思ってたのに。

どうして、そんな事言うのだろう?

私に隠さず、なんでも話して欲しかった。

『1人で抱え苦しまなくていいよ』と私に言ってくれたように陽向も1人で抱え苦しまないで欲しかった。

「もう、この話はおしまいにしよ。買ってきたシュークリーム食べようよ」

「う、うん」

いつの間にか明るい陽向に戻っていたから、私も明るく接するしか方法がなかった。

でも、頭の中には悲しそうな陽向の表情が脳裏に焼き付いて離れない。

ねぇ、教えて。

その瞳の奥に、なにがあるの?

なにが隠されているの?