ブレザーの替えなんていくらでもあるけど、着たくなかった。

優乃が洗ってくれたやつじゃないと嫌だと思った。

しわしわでも、優乃ががんばってくれたやつがいい。


そのしわでさえも、優乃の努力が詰まっているように感じて口角が自然と上がった。


昼休みに約束をとりつけるとちゃんと来てくれたことに嬉しくなる。

隣にいるだけで、心臓がうるさい。


笑顔を見るとおれまで頬が緩む。


笑みがこぼれるなんてこと、体験したことがなかった。

花咲優乃。不思議な女。


いままでは合格ラインだなって思ったら相手したけど、優乃はそんなレベルじゃない。


直感?

心が反応した?


そんなことあるわけない。

ないのに、知り合って間もないのにおれの内側に入り込んでくる優乃が気になる。



気がつけば『好きだ』なんて、初めての言葉を口にしていた。


初めての感情なのに、これが“好き”ってことなんだろうなって腑に落ちた。