伊月だし、おれの誕生日だし、仕方がないのはわかってる。
けど、ここまで優乃のところへ行けないのはストレスだな。
「萌ちゃん、綺麗になったね。今秋の新作リップも見たよ」
「ありがとうございます。あのリップ本当におすすめできるんです。昨年とは違って……」
おれが話している前方で西園寺が女社長と話している。
優乃の姿はない。
やっぱり西園寺に任せたのは間違いだったか……。
舌打ちしそうになるのをこらえて、周りにいた重役に失礼のないよう声をかけてから離れる。
優乃はどこだ。
ほかにおれに声をかけてくる重役と軽く挨拶を交わしながら、長話はせずに優乃を探す。
「あら七海くん、そちらのかわいらしい女性はもしかしてフィアンセ?」
「初めて見る方だ。すごく綺麗だけどモデルとかかな?」
談笑する声やピアノの音などが響く中、そんな声が聞こえハッとして振り返った。



