あれ……?
いらなかったかな?

あ、そっか。
御曹司だもんね。

こういうのは食べないのかな。



「駄菓子、好きじゃないですか?」

「好き」

「あ、よかったです。ではこれを……」

「好きだ」

「はい。先輩のなんで、全部もらってくださ……ほぇ?」



いきなり視界が真っ白になる。

いや、そんなことよりも体に圧迫感。


驚きながらも顔を上げると伊月先輩とすごく近い距離で視線が交わった。


前髪の先がわたしの鼻にかすめて、思考停止。



「……優乃」


名前を呼ばれて我に返り、思考を回す。

えっと、これは抱き締められてる……んだけど、どうして?


状況を理解しても、どうしてこんな状況になっているのかはわからない。




「伊月先輩?」


名前を呼ぶと影が落ちてくる。

から、すぐに手を伸ばした。



「熱……はないですね。大丈夫ですか?」



おでこに触れてみると、わたしと同じくらいだ。

様子がおかしいと思ったけど、熱じゃないならなんだろう?

これから熱が出ちゃうのかな?