さり気なくわたしの名前を呼ぶ先輩は、優しく微笑むとわたしの頭にぽんと手を置いた。
だけど、どうしても納得いかないよ。
かっこいい先輩なのにブレザーはしわしわって……。
「でも、伊月先輩にしわの寄ったブレザーを着せるなんて……」
「ちょっと待って。え、おれの名前知ってんの?」
「あ、名前はさっきメガネをかけた先輩に聞きました」
「メガネって、七海か」
伊月先輩が後ろにいるメガネをかけた先輩に視線を一瞬だけ向けるから、つられてそちらを見る。
すぐにメガネをかけた先輩と目が合うと、にこっと微笑んでくれた。
「七海です」
「あ、花咲優乃です。先ほどはありがとうございました」
ぺこっと頭を下げてお礼を言う。
名前もクラスも知らなかった伊月先輩を見つけられたのは、七海先輩のおかげだ。
「どういたしまして。おもしろいものを見れたから感謝してる」
「おもしろいもの?」
首を傾げると七海先輩が距離を詰めてくる。



