あの女、優乃に向かって言いたい放題言いやがって……。

おれに対する悪口は言えばいいけど、それを優乃に言うのはやめろよ。


優乃には知られたくなかった。


ほかの女なんてどうでもいい。

優乃だけは特別なのに、勝手なこと言いやがって。


やっぱりあの女、やっとくか。

おれと優乃の前だけじゃなくて、この学校からも追い出す。


いや、学校なんて生ぬるいな。

この地域、いや、県も追い出してやろうか。



『わたしの知っている先輩ではないので。わたしはわたしの見ている先輩を信じます』



え……?

いろいろ考えているときに、優乃のそんな声が耳に届いた。


おれのこと、信じるって……。

おれの前で機嫌とりにいい顔したり優しくするやつは多いけど、おれのいない場所でこんなことを言ってくれる人は初めてだ。


感極まって、泣いたことなんかもう記憶にないほど昔なのに、泣きそうって思った。



「これ、くれ。そのあとで消せ」

「はいはい」