明日から花の高校生。

新しい制服を眺めながら微笑んでいたら、
いきなり家のインターホンが鳴った。

----ピンポーン

「蝶子、出てーーー」

上の階からお母さんの声がして
ドアを開ける。

「はーーい」

-----ガチャ

「……よぉ。」

少し前髪が目にかかったイケメンがいた。

…いや、誰?怖い怖い


「えっと、うち、築山ですけど、合ってます…?」

イケメンは薄らと笑って言った。

……私の知っている笑顔だった。

「もう忘れたの?HP最大じゃん、俺。てふてふさん?」


「………嘘でしょ、あんた、雫…?」

怖い怖い怖い怖い

HPってこゆこと????

てふてふ、って呼び方を知ってるのは雫だけ。

「…てふてふって、やめてくれない?」

てふてふっていうのは昔の言葉で「蝶」って意味。

私の名前は蝶子だから、それで雫はてふてふと呼ぶ。


…ちょっと腹立つ。いや、かなり。

「俺、てふと同じ高校行くっておばさんから聞いた?」

「ちょ、ま、は?雫、いきなり帰ってきて何言ってんの?」

「いや、だから。じゃなくて。ごめん、最初に言う言葉違った。
……久しぶり。ただいま。」

………誰だ、この人。

私の知ってる雫は、こんな優しく微笑まない。
こんなに優しい声を出さない。

「お、おかえり…?」