嘘は溺愛のはじまり


――この時点で、私の恋が実ることは望み薄であることが確定した。


素敵だな、好きだな、と思った途端に、私の失恋が決定したのだ。


それでも――。

その決定的光景を見た後も、私は定期的にカフェに足を運んだ。

もちろん毎日というわけはいかなかったけど。

そして、行くたびに出会えるわけでもなかったけど……。


密かに想う分には、誰にも迷惑はかけない。

間違いなく失恋決定だから、誰かにこの想いを告げたりもしない。

いつか「そんなこともあったね」って笑えるようになるまで、胸の奥に仕舞い込みながら、でももう少しだけ、ひっそりと見つめさせて欲しい。

そう思っていた男性だった――。