「お話しするようになって、内面もすごく素敵な方だとすぐに分かりました。優しいのはもちろんですが、さり気ない気配りの仕方も、いつも私の気持ちを汲んでくれるところも、芯がぶれないところも。お仕事も出来るし、それでいてとても部下思いだし。とにかく本当に素敵で、とても、とても尊敬しています」
いつも思っていることのほんの一部しか言えていないけど、それでも、全て心の底から思ってることだ。
伊吹さんは少し驚いた表情で私の顔を見ながら聞いていたけれど、だんだん嬉しそうに少し目を細めて、私の手を優しく握った。
お母様には嘘を吐いていてかなり複雑な気持ちだし、きっと伊吹さんには演技だと思われているんだろうなと思うと、なんだか少し切ない。
伊吹さんの演技が上手かったからか、私の本気がお母様にしっかり伝わったからなのか、お母様も嬉しそうに微笑んでいた。
「うふふ、良かった。安心したわ。それだけお互いべた惚れなら、もう私の出る幕じゃないわね」
伊吹さんのお母様はそう言葉を残して、微笑みながら帰って行かれた。



